シーソー・ゲーム

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   恋はまるで、シーソーゲーム。  抜きつ抜かれつ、追いつ追われつ。まるでシーソーみたいに行ったり来たり、状況は刻々と変化していく。そして最後に地面に辿り着き、『両思い』というゴールに降り立った方が勝ちとなるのだ。  シーソーの向こう側に座る、あんたには負けない。どんなに接戦を繰り広げようとも、私は初めてのこの恋を必ず勝ち取ってみせる。 「今は水平ね」  私はその質問に、静かに答えた。  私たちは二人、サッカー部が練習試合を行っているグラウンドを見つめていた。  ただ今二対二。接戦である。しかし、正直勝敗などどうでもいい私は、ただただ機械的にスコアノートを記入していた。サッカー部マネージャーの風上にも置けない女である。  ベンチに座るミワと私の視線の先には、いつも同じ人物が映っている。が、ミワはその視線をふと私に向けると、不思議そうな顔をした。 「何、その答え。私、『バレンタインって好き?』って聞いたんだけど」 「あ、間違えた。なんでもない。バレンタインね、バレンタイン。好きでも嫌いでもないの。ただ、この恋が実ったら『バレンタイン大好き!』になるはず」  私は今まで恋などしたことがなかった。だから、バレンタインが好きかと聞かれると好きでも嫌いでもない。バレンタインという行事でこれまで、特別何もしてこなかったのだから。  でも、今年は違う。初めて人を好きになった私は、その人に本命チョコを渡すことにした。この恋が成就すれば、バレンタインは最高のものになるはずだ。  横を見ると、ミワは不敵な笑みを浮かべていた。 「なるほどね。私は好きだよ、バレンタイン。何故なら、私はこれまでチョコを渡した人と100%結ばれてきたから。幸せな思い出しかないね」  知っていた。ミワが小学校の頃チョコを渡した山内くん。中学の頃生徒会役員だった安倍くん。どちらの恋も成就され、私はすごいなあ、と思いながらそれを眺めていたのだ。  まさか初めての恋のライバルが、長年の親友であるミワになるとは思わなかった。  
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