シーソー・ゲーム

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   私の頭の中に、一人の女性の姿が浮かぶ。  それは、瀬戸くんと同じクラスのアヤノちゃんだった。  〝今年はそれとは別に、本命チョコも作るんだよ。サッカーボール型チョコ、雑になっても怒んないでよね〟  昨日、そうタッキーに言い捨てると、タッキーは背後でぼそりと呟いた。  〝……なあ、瀬戸には本命がいるからさ……諦めろよ〟  私はその言葉を流した。  でも、胸の奥では動揺していた。 「……分かんない。タッキーなんていつも適当なことしか言わないし。……でも私、本命の可能性がある人の心当たりはあるかも」 「……奇遇だね、私も心当たりはある」  ミワの言葉に、私はその顔を振り返る。  今はライバルだが、伊達に長いこと親友はやっていない。私たちは無駄に以心伝心すると、ひとまず本命チョコを作り始めた。  
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