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そんな汚い身体を、瑞生に触らせてしまった。内緒にして、触らせてしまった。
激しい罪悪感に、優奈は自分を責めて苦しくなってしまう。
ギシッ。軋むベッドの音と、感じた唇の熱に優奈は極限まで目を大きく見開いた。
なにが起きているのか理解できずに困惑し、時が止まってしまったかのように優奈は動きを止める。
「助けられなくて、きみをこんなにも苦しめて……」
「……っ、悪いのは、私です」
自分が招いたことなのだから、瑞生は悪くない。隙があった自分が悪いのだから、鳴瀬だって悪くはない。
相手を恨んだりするのではなく自分が悪いのだと訴える優奈の身体を、瑞生はふわりと包み込んだ。まるで、大切な宝物を守るかのように。
――どうして、優しくしてくれるの……?
痛い、苦しい。ひりつく胸にさらに瞳を潤ませた優奈は、与えられる優しいぬくもりにしがみついた。
「嫌われ、たくない。瑞生さんに、嫌われたくない……っ」
心の底からの叫びに、瑞生がゆっくりと息を吐く。
ひたい、瞼、そして唇。愛しいといわんばかりに唇を押しつけ、瑞生はふと穏やかな笑みを浮かべた。
「俺が、きみを嫌うはずがない。だから、怖がる必要はない」
固くなった心を解すように、瑞生は優奈の指に口づける。
ちゅっ、ちゅっと肌を吸う湿った音が部屋に響き、突如感じた生温い感触に優奈は視線を滑らせた。
自分の指を這う、瑞生の肉厚的な舌。
指の隙間から覗くそれがとても艶めかしくて、恥ずかしくて、一気に身体が熱を孕んだ。
「優奈……俺は」
言いかけたところで、邪魔をするように突然チャイムの音が鳴り響いた。
ハッと我に返った二人は、大切な言葉を紡ぎ合うことができず互いに長い睫毛を揺らしあう。
「あ、あの、出ないと」
こんなときにと眉を跳ねあげた瑞生と、さっと脱がされた服を手繰り寄せる優奈と。
「瑞生、さん……?」
ネクタイを絞め直した瑞生であるのに、なかなか部屋から出ていこうとしない。だから不思議に思い、優奈は首をこてんと傾げた。
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