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「どれぐらい歩いてた?」
振り向けば
ほんの少し困ったような顔で
「1時間……半くらい?」
「そんなに」
唇を尖らせてテヨンは頭を掻いた。
「ずっと後ろをついて来てくれたの?」
「ん、まあ……」
すっかり藍色に染まった空の下。
ようやく感覚を取り戻した身体は
今になって寒さと恐怖で震え出した。
「それじゃ1時間半分の時給払わないとな」
冗談のつもりが
笑えるどころか。
「タクヤ……?」
「いや、何でもない……」
まさか女みたいに
好きな男の前でポロポロ泣くなんて――。
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