第8章

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「テヨン……」 長い前髪をかき上げ顔を上げる。 そこに立っていたのは 変装して影に隠れている偽物じゃない。 「マジかよ……」 僕がよく知る 強烈なオーラを纏ったカン・テヨンだった。 怯えの色など微塵もない。 露わになった力強い瞳で 「チャギヤ」 「え……」 テヨンはまっすぐ僕に向かって呼びかけた。 (チャギヤって……) 僕が学生時代に齧った韓国語が正しければ それは恋人に対する呼びかけだ。 それに続く言葉を 僕は一生忘れないだろうと思った。 「ナルル ミドラ――」 テヨンはたった一言 こう言ったんだ。 「俺を信じろ」って――。
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