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「おい、時東。いつまで寝てんだ」
「……南さん」
肩を揺さぶられて、時東は目を覚ました。窓からは朝日が差し込んでいる。昨日の部屋だ。そうだった。久しぶりに酒の味が分かって、嬉しくてはしゃぎ過ぎた。そのテンションで飲み過ぎた。
「なんか、悪夢だった」
毛布から抜け出して、時東はひとり言の調子で呟いた。座卓の上は綺麗に片付いている。自分が潰れた後も南が後始末をしてくれたのだろう。時東は自分が酒に弱いと思ったことはなかったが、南は遥かにその上を行っていた。ザルじゃない、あれはワクだ。
「悪夢? あれだけ酒飲んで大はしゃぎしてたと思ったら、寝たら悪夢かよ。大忙しだな」
「ごめんなさい」
「別にいいけど。美人局とかに引っかかって、妙な写真、撮られねぇようにしろよ、芸能人」
「しないから。と言うか、なんなの、その南さんの妙に偏った知識」
若干、昨日の酒が残っている。頭の芯が重い。座卓に肘をついて項垂れていると、全く酒の残っていなさそうな南の声が落ちてきた。
「飯食うか? 吐くか?」
「その二択止めてあげて、南さん」
折角美味しくいただいたものを吐き出したくはない。
「でも、気持ち悪くはないから大丈夫。ちょっと頭が痛いだけ」
「そら、あれだけ飲んだら、そうもなるだろ」
「南さんはなってないじゃない」
「俺はな」
強いですからと言わんばかりだ。俺も、もう少し強くなりたい。時東はそのまま座卓に撃沈した。ついでにもう少しだけでいいから休みたい。
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