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「あの、春風さん。戸締りお願いして良いですか?」
鍵を手渡すと、春風が「あぁ」と笑った。
「雑だろ、あいつ」
「さすがに郵便受けに入れて帰る気にはなれなくて。と言っても、お店にお邪魔したら迷惑だろうし」
「だろうね。了解」
否定せずにさらりと請け負った春風に、同類だなぁと時東は思った。空気感が南と似ている。長い間、一緒にいる幼馴染みとやらは、こうなるものなのだろうか。
すごいなぁとは思うが、羨ましいとは思わない。時東は、友情だとか親友だとか、仲間だとか、恋人だとか。そう言った類をあまり信じていない。持ち得る関係を否定する気はないけれど、自分にはないと思ってしまうのだ。もう、それを誰かに言うつもりもないけれど。
南の家の居間で完全に寛いでいる春風に暇を告げて、時東はバイクに鍵を差し込んだ。
空が高い。まだ秋の空をしている。
今日はきっと良い一日になるなぁ。自然とそう思って、時東はエンジンを回した。また二週間後、逢いに来よう。次は出来れば、もう少し早い時間に。東京まで二時間弱。
ここまで来るのはあっという間なのに、帰るのは遠く感じる。現金な思考を閉じ込めて、町道を行く。国道に変わるまで、あと少し。
二日酔いは、すっかりどこかに引っ込んでいた。
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