[0:南食堂 11月4日22時24分]

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「見てくれてるの?」 「いや、見てねぇって。と言うか、俺の部屋、テレビないし」  自宅の居間にはあるが、つけることは滅多にない。稼働しているのは、この「南食堂」の店内だけである。 「南さんが冷たい」 「そりゃ、おまえは客じゃねぇからな」  閉店時間は二十一時。現在時刻二十二時半。外のガラス戸には「閉店」の札がかかり、のれんも店内に引っ込めてある。よって、営業時間を大幅に過ぎてから押し掛けている上に、メニュー外の有りもの野菜炒めに目を輝かせているこの男は客ではない。 「と言うか、総集編でまで流すな。なんなんだ、嫌がらせか」 「いや、受けが良かったからじゃない? ちなみに俺は南さんと一緒にテレビを見れて大満足」  店に入るなりテレビをつけてくれとごねた男は、幸せそうな顔で白米を頬張っている。 「バラエティ企画とか死ねよって思ってたけど、このロケだけは行って良かった。この町に来て良かった」 「そうか」 「二ヶ月前の俺の決断を俺は褒めたい。だから南さん、俺と結婚」 「するわけがない」  カメラも回っていないのに何を言い出すか、この男は。真顔で空いた茶碗を差し出してきた時東の軽そうな頭をカウンター越しに叩くと、想像と違わない軽い音がした。  このチャラついた頭の中には、果たして何が詰まっているのか。南凛太朗は考える。  目つきが悪い。愛想がない。そこまで高身長なわけでもないのに威圧感が半端ない。とりあえずなにか怖い。称されること二十六年。第一印象でモテたことは皆無だった。つい二ヶ月前までは。
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