2.Re-The First Night

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キレイな夕日に赤く染まって、映し出される非日常な街並み。 水辺に反射した夕日と、うっすらと光る街灯。 私たちはフェンスに寄りかかりながら、 その光景をうっとりと眺めていた。 「ここ、建物の感じがイタリアなんだよな」 「あ。そういえば、そうだよね……」 「俺が、ナポリで暮らし始める前にさ、 一人でベネチアに行ったんだ」 達己は、遠くの景色を眺めながら、ポツリポツリと話し始める。 「こんな風に運河と橋がいっぱいあって、 さっき乗ったゴンドラみたいなのも、あちこちから出ててさ。 夕日はやっぱり、すげぇ綺麗だった」 「へぇ……」 何気ない話も、 達己の口から出ると、 それは私の心を震わせてくれる。 「……今度は、優奈も、一緒に行こうな」 そう言って、私の肩に腕を回して、 キュっと体を密着させた。 そのたった一言が、胸を熱くさせる。 私、この先もずっと、 達己の隣にいて、いいんだよね。 「うん。行きたい」 出した声が震えていて、 遠くを見ていた達己が、私の顔を覗き込んだ。 「ん?どうした?」 「ごめん。 なんだか、夢みたいで……。 嬉しくて」 言葉にしたとたん 溜まっていた涙が、頬をつたう。 泣くつもりなんてなかったのに……。
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