1.新入社員だったころ

4/5
前へ
/29ページ
次へ
「ねぇ。森川くんってモテるでしょ?」 女の1人が俺の横にべったり張り付くように座って聞く。 この女、名前なんだっけ。 たしか堀越とか言ったっけ・・。 「まぁ・・」 素っ気無く答える。 「やっぱりー。ね。彼女は?いるの?」 ちょっと高い甘えたような声が耳につく。 正直こんな話題は、飽き飽きだし、 ベタベタしてくる女も好きじゃない。 「居るといえばいる」 頭に思い浮かんだ女は一人じゃないけど・・。 「ふうん。そうなんだー。残念」 ちょっと声のトーンを落とすけど、 俺の横に張り付いたまま動く気はないらしい。 「堀越さん、分かり易過ぎ。 俺は、彼女いないから!よろしく!」 反対隣に座っていた男の一人が、堀越に声をかけた。 「え。別にいいや」 即答されてるし・・。 その様子を見ていた、俺の目の前に座った女が小さく笑った。 こいつ、ヘラヘラうすら笑いばっかり浮かべて、あんましゃべんないし、 何考えてるか全然わかんねぇ。 変な奴。 「な。田口さんは?彼氏は?」 そっか田口って、名前だったな。 「・・えぇっと・・。 いると言えば、いるかな・・」 田口は聞かれた男の顔をしっかり見ながら、 小さな声で答えた。 「まじでー。ショックー」 聞いた男が、情けない声をあげるけど・・。 田口のその答え、俺と同じじゃねぇか・・。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加