第2章 サンディール王国

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「冒険者の常備品になれば量産出来るし、儲けも出るさ。先ずは使って貰わないと、これの良さは分からないだろ?」 「そうだな」 「使ってみて納得したら、お仲間にも薦めてくれよ」 「ああ、儲かると良いな」 「毎度あり!」 イーゴはそのまま商店街を奥へと進む。 商店街の外れには大きな字で『サン爺』と書かれた暖簾が下がった古びた店舗があった。他の店とは違い引戸が付いている。 『サン爺』は安い旨い多いと3拍子揃った評判の店である。サンディール王国の庶民に愛され、もう長い間ここに店を構えている。 「いらっしゃい!」 暖簾を潜って立て付けの悪い引戸を開けると、目の前にカウンターがある。カウンター席が5つあるだけの小さな店だ。 「おうイーゴ、久しぶりだな」 「あらイーゴさん、いらっしゃい」 カウンターの向こうから小柄な年配の夫婦が迎えてくれた。 少し寂しくなった茶髪の店主と長い茶髪を三つ編みにして後ろに垂らした妻は、いつも笑顔を絶やさず客を迎えてくれる。 殆どの客の名前を覚えているというから驚きだ。 まるで家に帰ったかの様な暖かい空気が好きで、ここに通う客もいるそうだ。
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