第1章 ジャニュアール王国

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カフェの前には相変わらず行列が出来ていた。しかし、オープン当初程の長い行列ではなかったので、それほど待つこともなく店内に入れた。 店内の甘い香りに、イーゴは表情を緩めメニューを開いた。 人気No.1だったジュエルケーキは、カスタードパイにその座を譲っていた。 イーゴはカスタードパイセットとジュエルケーキを単品で頼んだ。注文が控えめなのは懐が寂しかったからである。 ほんのり塩気のあるサクサクのパイの土台に、トロリとコクのあるカスタードクリームがたっぷりと詰まったパイは絶品だった。 飾り付けの生クリームとフルーツは要らないのではとイーゴは思ったが、きっと見た目も大事なのだろう。 フワフワのスポンジケーキに甘さ控えめの生クリームと様々なベリーでデコレーションされたジュエルケーキも最高だった。 こんな看板メニューがあるのに新しいスイーツを開発したパティシエに、イーゴは深く感謝した。 ほぼ1年ぶりのスイーツをイーゴはゆっくりと堪能した。ひと口ひと口が幸せを運んでくれる。 これがイーゴが人間界との関わりを絶てない理由の1つだった。
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