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「イーゴ!いい所に来てくれたわ」
ギルド黒猫のマスターが満面の笑みを浮かべてイーゴを迎えた。
いつも妖艶な笑顔を浮かべているマスターだが、こんなに嬉しそうな顔は初めてだった。
柔らかそうな白い素材で出来たオフショルダーのブラウスに黒いミニタイトを履いたマスターは、イーゴの背中にそっと手を添えると黒いソファーへと誘った。
いつに無い丁寧な出迎えにイーゴは戸惑っていた。悪い予感しかしない。
マスターはテーブルの上にある呼び鈴を鳴らすと、やって来たスタッフに飲み物を頼んだ。
2人の前に紅茶を置いたスタッフが退室すると、早速マスターは依頼書をイーゴの前に滑らせた。
「高ランカーが出払っていて困っていたの。この依頼をお願いするわ」
イーゴはザッと依頼書に目を通した。北の国ホックへの配達依頼だった。
「高ランカー?船で運べばいいだけだろう?」
「この時期は海が荒れて船は欠航しているのよ。北の国は山に囲まれているから、山越えするしか方法が無いの」
「誰かホックに行った事がある奴に、転移で届けて貰えばいいだろう?」
「理由は分からないけど、北の山を転移魔法で越えられないのよ」
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