28人が本棚に入れています
本棚に追加
イーゴはため息をついた。
「俺が寒いのが苦手なのを知っているだろう?」
サンディールの国土は広大だ。王都から北に向かえば、今の時期ならば積雪している地方もある。これまではマスターは寒さが苦手なイーゴに北の地方の依頼を回す事は無かった。
「重々承知よ。・・・・これをあげるわ」
ソファーから立ち上がったマスターは、飾り棚の小箱から何かを取り出してイーゴに渡した。
「これは?」
明るい茶色の皮のバングルだった。中央に刻まれた魔方陣の中心に、小粒だか美しい赤い宝石が填まっている。
「防寒のアクセサリーよ。これを装備していれば、北の山の寒さから身を守れるわ」
「しかし・・・・」
「イーゴ、お願いよ。黒猫の様な私設のギルドに滅多に来ない国からの依頼なの。断りたくないのよ」
マスターは両手を合わせ頭を下げた。
「だいたい何でこんな大変な時期に、こんなものを配達させるんだ」
グリーティングカードの配達依頼に緊急性は欠片もない。
「王族同士のお付き合いらしいわ」
「たかが時候の挨拶の為に、冒険者に命を賭けさせるのか。納得出来ないな」
イーゴの顔が険しくなる。
最初のコメントを投稿しよう!