第2章 サンディール王国

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イーゴはため息をついた。 「俺が寒いのが苦手なのを知っているだろう?」 サンディールの国土は広大だ。王都から北に向かえば、今の時期ならば積雪している地方もある。これまではマスターは寒さが苦手なイーゴに北の地方の依頼を回す事は無かった。 「重々承知よ。・・・・これをあげるわ」 ソファーから立ち上がったマスターは、飾り棚の小箱から何かを取り出してイーゴに渡した。 「これは?」 明るい茶色の皮のバングルだった。中央に刻まれた魔方陣の中心に、小粒だか美しい赤い宝石が填まっている。 「防寒のアクセサリーよ。これを装備していれば、北の山の寒さから身を守れるわ」 「しかし・・・・」 「イーゴ、お願いよ。黒猫の様な私設のギルドに滅多に来ない国からの依頼なの。断りたくないのよ」 マスターは両手を合わせ頭を下げた。 「だいたい何でこんな大変な時期に、こんなものを配達させるんだ」 グリーティングカードの配達依頼に緊急性は欠片もない。 「王族同士のお付き合いらしいわ」 「たかが時候の挨拶の為に、冒険者に命を賭けさせるのか。納得出来ないな」 イーゴの顔が険しくなる。
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