第2章 サンディール王国

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イーゴの顔をチラリと見たマスターは奥の手を出す。 「北の国には、ご当地でしか食べられない変わったスイーツがあるそうよ」 「・・・・仕方ないな」 弱点を突かれたイーゴが陥落した。 イーゴとの取り引きに勝利したマスターは再び立ち上がり、壁際の棚の中央に置かれた金庫を開けた。 「着手金よ」 破格の待遇である。余程困っていたのだろう。 「北の街に寄ってしっかり準備した方が良いわ」 「ああ」 イーゴは着手金の入った皮の袋とグリーティングカードを受け取ると、マスタールームを退室した。 正門の両側に広がる商店街は今日も賑わっていた。木造の屋根と壁だけの簡易な建物が並ぶエリアだが、張り出した色とりどりの庇が目に楽しい。 商人の呼び込みの声や客の値切る声が飛び交う道を、浮かない顔をしたイーゴが歩いていた。 旅の支度なら王都で購入した方が、値段も安いし種類も豊富だ。 大概の物はボックスに入っているイーゴは、取り敢えずパンと野菜を購入、ついでに目に着いた白桃のシロップ漬けの瓶詰を購入した。幸い懐は暖かい。 道具屋の店先に置かれた小さな鍋が気になって、イーゴは足を止めた。
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