私が傘をささない理由

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「なんでもない。大丈夫。」 そう言って笑ってみせる。とにかく私に出来る精一杯の笑顔で。 なら良かった。という言葉と同時に頭をわしゃわしゃと撫でられる。 「何すんのよ。」 なんて言ってみるけど、健にされるのはなんだか嫌じゃなかった。我ながら可愛げがないと思う。 「あはは。ごめんごめん。そうだ。これやるよ。」 差し出されたのは、緑のパッケージに包まれたぬれおかき。 「ぬれおかき?」 「そう。貰ったんだ。俺の一番好きなお菓子。」 彼は私の鼓動が速くなったこともしらず、嬉しいだろ?とでも言わんばかりの笑顔を私にむけた。14日と表示された腕時計の針が、カチッと進む音がした。
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