私が傘をささない理由

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あれは中学のときだった。私達は小学校から8年間ずっとクラスが一緒で、良くお互いにからかい合ったりしていた。いわゆる腐れ縁というやつだ。多分世間的にいうと良くあるパターンなのかもしれないが、からかい合っているうちに私は健を好きになっていった。だから、バレンタインデーが近かったあの日。皆がバレンタインデーの話題で持ち切りのなか、掃除の時間に意を決して聞いてみた。 「ねえ、もしさ。もしだよ?私がチョコあげたらどうする?」 箒を掃く健の手が一瞬止まり、 「お返しにぬれおかきあげるよ。」 笑って返された。失恋が決定した瞬間。健に全然恋愛対象として見られていないことは明らかだった。 「ぬれおかきって何それ。」 だから私も笑って返す。それがせめてもの私の強がり。 こうして私の恋は呆気なく終わりを告げた。
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