16355人が本棚に入れています
本棚に追加
/889ページ
「あ、そうだ瀬野。お前今夜空いてる?」
「え? 今夜、ですか?」
片桐先輩からの突然のお誘いに、驚きを禁じ得ません。ランチなどはご一緒しますが夜はありません。ふたりきりなのでしょうか? 何の用でしょうか?
「えっと、今夜は、えっと」
今夜は新しくリリースされた乙女ゲームを徹夜でやろうと思っていたんです。
「上司に誘われたら予定があってもイエスと言え」
でも、乙女ゲームが。
「じゃーん。これなーんだ?」
渋っていると、先輩はポケットから何かを取り出しました。赤と青のコイン。
「何ですかそれ?」
「正しい未来の選択」
「はい?」
ちゃらちゃらと手の中でシェイクすると、左右の拳の中に1枚ずつ収めました。
「赤だったら、お前は今夜俺に付き合う。青だったら、帰ってもいい。さぁ右か左どちらか選べ」
「はぁ……では左で」
左の掌を開けると、出て来たのは赤のコインでした。
「よし決まりだな。21時に駅前の八兵衛。つーかどうせ用事ないだろ」
通達しさっさと自分のデスクに行ってしまいました。
どうせ用事ないだろって横暴すぎませんか。いえ、おっしゃる通りなのですけれど。
赤のコインを選んでしまったのは私ですし、俺様には逆らえませんから行きますけど。
最初のコメントを投稿しよう!