第2話 俺様系男子の策略

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「ようするに先輩は、竹澤さんにはお嬢様がいらっしゃるからとか、私ごときでは無謀だとか、上司と部下だからとか、そういったことをおっしゃりたいのですか?」 「相手のお嬢様は漫画に出て来るような我が儘性悪お嬢様じゃないらしいぞ。明るくて気立てのいい、男を立てる女だって。かなりハイレベル。それに透さんに心底惚れ込んでる」 蔵元先輩といい、竹澤さんを好きな女性は何故揃いも揃ってハイスペックなのでしょうか。答えは簡単です。竹澤さんがハイスペックだからです。 「諦める理由はたくさんあります。けれど、好きになってしまったものは仕方ありませんっ!問題はライバルがどうこうではなくて、竹澤さんが私をどう思うか、という一点ではないでしょうかーっ!」 「その通りだ」 「へ?」 小娘の戯言だと蹴散らされると思っていたんです。または酷く辛辣な言葉で馬鹿にされると思っていたんです。なのに片桐先輩から同意がいただけるとは、予想外で拍子抜けでした。 「透さんはお嬢様と私的な付き合いはしているが男女の関係ではないんだ。手を出せば社長の意のままだと分かっているから、あの人も相当慎重になってるんだろうな」 「え、ほ、ほんとですか?」 「まぁ、色々情報のツテがあるんだよ」 得意げな先輩。本当ならば、私にとっては朗報以外の何物でもありません。 死にかけの気持ちがむくむくと起き上がってきます。 でも、社長のお嬢様と結婚されたら、間違いなく先の未来は保証されるでしょう。シンデレラガールならぬシンデレラボーイです。 なのにそれを留まっている。どうして留まるのでしょう? 「あ。もしかして……好きな女性でもいるんじゃあ」 嫌な事に、口にしてみると、それがとてもしっくり来るんです。お嬢様との関係を留まっているのは、密かに想い人がいるから。 竹澤さんに好きな人……考えるとぐっと胸が締め付けられます。苦しくなります。
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