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「芹那がさぁ」
「せ、芹那?」
「蔵元芹那」
あぁ。キレると任侠モードになる蔵元先輩。そういえば蔵元先輩は片桐先輩の2期後輩で、どこかの出向先で一緒だった時期があったらしいのです。
「この俺様が想ってやってるというのに、あの女は竹澤さん竹澤さんと言うばかりでまるで気付かない」
なんと! 片桐先輩は蔵元先輩が好きだったのですね!
「なるほどぅっ!」
そういうことだったんですか、ガッテンです。私をけしかけて竹澤さんとくっつけさせ、自分は蔵元先輩をゲットしようという魂胆なのですね。
そうでした、片桐先輩のような人が慈善事業などするわけがないのです。自分の利益になり得るからこそ私に目をつけたのです。
しかし片桐先輩、蔵元さんは結構な性格をしてらっしゃるようなのですがその辺りはご存知なのでしょうか。
「あいつ、時々893の人みたくなるだろ? 実はトーチャンがリアル893なんだよ。それが嫌で嫌で仕方がないんだと。あいつの表向きの顔は全部コンプレックスの裏返しだ。透さんを懸命に追う姿も全部どうしようもなく可愛い」
不覚。切ない顔を隠しもせず見せてくれた先輩に、きゅんとしてしまいました。
だって普段は俺様で怖いものなどなさそうな男性が、たった1人の彼女を想いながら顔を赤らめたり苦しそうにしたりしているんです。
可愛いです、片桐先輩っ。
「透さんはあの通り忙しいから何かとサブの俺を頼っている。課の業務のスケジュール調整をしているのはお前も知っているな。これから俺はお前と透さんの接触が増えるよう水面下であれこれ動いてやる。……後は分かるな?ぬらりひょん」
ぎろりと鋭い目に睨みつけられます。
「は、はひっ」
チャンスをモノにしろ。そういう事ですね? アニキ。
「おぅ、透さんとどうなりたいんだ? 口に出して言ってみろ!」
「つ、付き合いたいですっ」
「声が小さーーいっ! もういっぺん!」
「付き合いたいです!!」
「まだまだァ!」
「付き合いたいですーっ! ぬらりひょんは竹澤透さんと付き合いたいですーっ! 突き合いたいですーーーーーっ!」
「お前何大声で恥ずかしいこと言ってんだ? 恥ずかしい奴だな、あっち行け」
シッシッシッと飛んで来た蝿でもよけるような仕草です。
「しょ、しょんなー!?あなた様が言えとおっしゃったのにーー!?」
酷すぎです。
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