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「まぁ、芹那には悪いんだけどな」
そうです。私と片桐のアニキが手を組めば蔵元先輩は泣きを見る場面も多くなるかもしれません。
でも、と私は思います。
恋とは、多分、闘いなのです。
私はこれから蔵元さんと闘い、竹澤さんを好きなたくさんの女性達と闘い、竹澤さんと闘い、さらに自分自身とも闘わなければいけないのです。
恋愛の闘いのルールは簡単です。たくさん惚れた者は負ける。それだけなのです。
虎のような男性ですら、惚れてしまえば借りて来た猫も同然になってしまう、切ない闘いなのです。
正攻法で馬鹿正直になるのも手段ですが、時期が尚早ですと簡単に爆発してしまいます。
そうならない為には綿密に策略を立て、時に利害関係が合う者と手を組み、卑怯な真似も致し方ありません。
やり方と運次第では形成を逆転も可能、それも恋愛の闘いです。
私はこの後、片桐のアニキのはからいといくつかの幸運に恵まれ竹澤さんにお近づきになれました。
どの程度かといいますと……。
まずはあれからお話ししませんとね。
土曜の葬式、と名をつけましょう。
ある方のお葬式がありました。
竹澤さんと私が会社の代表として出席したのはいいのですが、それがドのつくほど田舎の町で、更に天候が最悪だったものですから、交通手段が途絶え、帰る足がなくなってしまったのです。
急遽ホテルに宿泊する事態に。
それだけでも超幸運なのですが、神は更に私に向かってにっこりと微笑みました。
部屋が同じになってしまったのです。
信じられますか? 好きな人と一夜を共にしたのですよ?
神は何という仕掛けを用意して下さるのでしょうか?
あの部屋の中で私と竹澤さんは――。
ですが決して楽しい嬉しいばかりではなかったんです。
ここから先は、どうかその辺りに注意してお読み下さいませ。
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