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「瀬野さんは初期配属から人事だよね。どう?」
「私人事のお仕事好きですっ。なんかキューピッドみたいな気持ちになりますっ!」
「あはは、キューピッドね。僕も部署色々見て来たけど人事って面白い。結局、なにごとも縁なんだなぁって感じるね」
縁って本当に不思議です。何かの匙加減ひとつ次第では竹澤さんに出会っていなかったのです。今ここにいないのです。
「ふぅ」
背筋を伸ばしひとつ深呼吸をしました。
喪に服さなければいけないのに煩悩まみれな自分が恥ずかしくなったからです。
「瀬野さん、大丈夫?」
「はい。大丈夫です!」
いつもの香水の香りも今日ばかりはしません。真っ黒のスーツに黒いネクタイです。私も似たようなものです。
「悪いね、休日に。しかも故人と面識ないのに付き合わせてしまって」
「全然大丈夫です。おひとりでは格好がつかないでしょうし!」
「葬儀の後はあちらの親族に食事の席に誘われているんだ。重ね重ねで悪いけど、一緒に出席して欲しい。夜には解放するから」
本当に本当に本当に不謹慎なのですが、ここで自分を繕っても仕方ないのでやっぱり本音を言います。
私、竹澤さんの元上司さんにお礼を言いたいくらいでした。
こんなまたとない機会を下さって有難うございます、と。
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