第3話 土曜の葬式

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帰りのバスに揺られ、適当な会話をしているといつの間にか終点にたどり着いていました。 「じゃあ、災難もありましたがお疲れ様でしたっ!また明日から仕事ですけど、残り時間はゆっくり休んでくださいねっ!」 「うん。瀬野さんも。昨晩は、本当に申し訳なかったと思っている。醜態を晒してしまって……」 「また! もーう、もうもうもう! 何度も謝らないで下さいよぅ。上司にそんな謝れらたりすると困っちゃいますよ」 「そうかもしれないけど……」 普段は悪酔いなんてしないんだとか、昨日は変だったんだとか、言い訳はもういいのです。 「そんなに言うなら今度夕食でもご馳走して下さい! 美味しいパスタかなんかで大丈夫ですからねっ! 私期待しちゃいますよ? ではまた明日!」 はち切れんばかりの笑顔で告げ、歩き出しました。 「瀬野さん!」 ですが数歩の所で、呼び止められたのです。何か聞きたそうな困っている顔です。 もしかしたら。もしかすると。 竹澤さんの唇や掌には私の感傷が残っているのかもしれませんね。それで夢ではなかったと疑っているのかもしれません。 いえ、きっとそうなのでしょう。 心は夢の中にいても感触だけは現実なのですから。 「どうしたんですかー?」 私はやはり、先ほどと同じ笑顔で彼を見つめ返しました。 アカデミー賞主演女優賞ばりの名演技だったと自我自賛したい所です。 「……何でもないよ。お疲れ様でした。ありがとう」 「はいっ!失礼しますっ!」 再び振り返るとだぁっと涙が流れました。大洪水です。 泣く位なら真実を話してしまえばいいのにと思いましたか。 真実を話す意味はあるのでしょうか。私には分かりませんでした。 がっかりされたくない。でも、意地悪もしたかった。 何か別の選択肢があったと思いますか。 こうするしかなかったと思いませんか。
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