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第4話 クレバーに立ち回る
「瀬野、昼メシいくぞ」
土曜の葬式事件からの、翌月曜日です。お昼の時間になると同時に片桐のアニキに声を掛けられました。
「最近お2人仲良いんですね」
誰かが言いました。深い意味はないでしょう。無邪気でしたから。
課内の人がちらっと反応したような気がしました。蔵元先輩も、竹澤さんも。気のせいでしょうか。自意識過剰でしょうか。
「まーな」
片桐のアニキはあえて否定しません。意味ありげに笑います。わざわざ皆さんの前で私を誘うのもまた計算なのでしょう。
どうやらこの人はいつも色んな可能性を含ませながら行動しているようです。
私のような単細胞無計画人間からしてみれば、片桐のアニキは策士にしか見えません。
で、お昼なんですが。
「土曜日何があったんだ」
「へ!?」
何も言わない内から何かあった前提で話をして来ます。
「透さんは何ら変わりないが、お前見るからに不審者だぞ」
「え!? わたわた!?」
私ってそんなに分かり易いのですか? アカデミー賞ははく奪ですか?
「さぁ吐け、ぬらりひょん。吐けばすっきりする」
「……じ、実はかくかくしかじかで、不可抗力で泊まったんです」
「はん。まさかヤッたわけじゃねぇだろ?」
片桐のアニキは煙草をふかしながらにやにやしています。やったやらないをネタにするなんて、ゴシップ記者ではありませんか。
でも協力者である以上、現状は正確にお伝えしておかないといけません。
「あのあのあのあにょ……ヤ、ヤッてませんが……キスして……チ、チチは揉まれた……かもしれません……」
アニキは口を開けたまま固まっています。煙草の灰の塊がボロっとテーブルに落ちました。
「それであのっ私!」
「待て、待て。悪い。最近耳が遠いのかもしれない」
ちらと見ると、目を瞑って耳に小指突っ込んでいます。
「もう一度最初から言ってくれ」
「えぇ? で、ですから……おセックスはしていませんが……き、キスはいっぱいしました。おっぱいを揉まれて脚も少し触られたと思います……」
アニキはその状態で固まっています。
私は顔を上げられませんでした。だって、どうして男性にこのような恥ずかしい話をしなければいけないのでしょう。
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