16465人が本棚に入れています
本棚に追加
「で」
「いえ、竹澤さんはとても酔っていてベロベロになっていたんです。だから私だと思っていなくって……」
「は?」
「寝言で、かえで、と言ったんです。なので多分他の人と間違えたんです。その後すぐ眠ってしまって……。もう何も覚えてないと思います」
「で。お前、透さんにチチ揉まれるだけ揉まれて帰って来たんか」
「そ、そんなにたくさん揉まれてはいないんですけど」
「ティクビ摘まれたんか」
「いえ、ティクビは摘まれていませんけど」
アニキがブハッと吹き出しました。
「ぎゃっははははははっ! ヒサン! それは超ヒサンだ瀬野! チチ揉まれるだけ揉まれておやすみなさいて! しかも相手は自分だと思っていない上に覚えてないとか! 俺なら死ぬ! 生きてけん! ぎゃはははははははっ!!!」
「ヒ、酷イ!? アナタナゼ、ソンナワタシ笑ウデスカ!?」
「バカヤロウ! こんな笑いはどこにもねぇぞ! ぎゃははははははっ!……ヒィー!ヒィー!」
糸が切れたように大笑いするのです。アニキに話した事をとても後悔しました。
ですがひとしきり笑いころげた後、真面目な顔に戻りました。反省したのでしょうか?
「かえで……楓?まぁ例の長い春の元彼女だろうな。あの人、通りでお嬢様に手を出さないわけだ。なるほどねぇ」
「……やはりそうなんですかね」
「男は過去の女を引きずる生き物だからなぁ。瀬野、相手は相当手ごわいぞ。どうすんだお前」
どうするんだって。
諦めるかどうかという意味でしょうか。
前にも言いましたが、恋愛は闘いなのです。
ここで身を引けばもう痛い思いはせずに済みますよ。
「いえ、まだ頑張りますっ。まだまだですよアニキ!」
アニキに大爆笑されて吹っ切れたんです。
逆転の発想をすれば、楓さんは竹澤さんの所に戻っていない。私に勝機がないわけではないと思ったんです。
お前なんか嫌いだと言われるまでは諦められません。
最初のコメントを投稿しよう!