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「カンパイ!」
私達の課は社員同士の親睦を深める目的で2ヶ月に1度全員参加の飲み会が開催されます。近所の居酒屋さんの広間を貸し切って、皆でわいわいがやがややるんです。
「おい、瀬野。飲めや」
寄って来た片桐先輩は今夜も私を狙い打ちです。
「いっただきまーす」
ですが、私だってザルを自称しているんですもの。泡盛だろうがテキーラだろうが、潰れるわけにはゆきませんもの。
「そういえばさ、今日透さんお前に怒ってただろ。あぁいうの珍しくねぇ?」
「そうですか?」
「いつもと違うかなぁって……まぁ、なんとなくだけどな」
竹澤さんは感情を外に出さないタイプです。何を考えているのか、人に読ませないような所があるのです。
が、確かに今日は明らかに怒ってるな、と思うような怒り方をされました。
それだけ私のミスがつまらなかったのでしょうね。
ミスは時に会社の沽券に関わる場合もあります。
部下のミスは上司が責任を取らなくてはいけなくて、だから余計に気をつけなければいけないのに……私ときたら。
ああ。
せっかくの楽しいお酒の席なのに、気持ちが沈んでいきます。竹澤さんは毎度のことながら、女性に囲まれてて近づけるような雰囲気でもありませんし。
「アニキ、私ちょっとお手洗いに……あれ」
立ち上がった瞬間ぐわーん、と世界が回転したように感じました。
「っとっと、アラララ……?」
「お、おい瀬野大丈夫か。……おいっ!?瀬野――」
アニキの声が遠ざかってゆきます。
おかしいですね。
ザルの私が酔っ払うなんてあり得ないのですが 。
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