第5話 真実を捻じ曲げる

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竹澤さん、私を見て呆れていました。 だってカエルみたく無様にひっくり返ったんですもの。どうせ倒れるなら、もっと可愛らしく倒れられなかったものでしょうか。 まだ怒ってるかな。使えない部下を持ってげんなりしてるかな。 とぼとぼ。 「えき、えき」 あら? 駅はどっちだっけ?それよりもここどこだっけ? エ? アレ? 「ちょっと! 瀬野さん!」 「へ? ぎえええええええーーー!?」 竹澤さんじゃないですか。 「だから何なの、そのオバケでも見たような反応は……」 カラオケ行ったはずの竹澤さんが。呆れて怒っていた筈の竹澤さんが。 ここにいらっしゃる。これが叫べずにいられますか。動揺せずにいられますか。 「あぅ……か、からお……からからお……」 「からお? あぁ、カラオケ? カラオケ嫌いだから。それより足下めちゃくちゃフラついてたけど大丈夫なのか? 駅、そっちじゃないよ?」 「だ、だいじょうぶですよ。ほら、フヒヒっフヒヒっ!」 今日はただでさえご迷惑おかけしましたから。これ以上心配されるわけにはゆきませんから。竹澤さんは微笑んでいる私を見て、目をぎゅぅーっと細めています。 「その笑いだけは信用出来ないな……」 「いえ、ほんとーに大丈夫ですから、たけざわさんはカラオケいってくださ」 言い終えるよりも先に、腕をがしっと掴まれました。 「いいから行くよ」 そうして私を強引にひっぱって行きます。道路側で列を作っているタクシー乗り場の方へです。 「へ、あ、あのぅ……?」 もしかして一緒に乗って下さるのでしょうか。 それともタクシー放り込んでさようならでしょうか。 「君に何かあったら困ります。家までちゃんと送り届けます」 「い、一緒に帰って下さるのですか……?」 「うん」 嬉しい。嬉しすぎます。最近の私、ついてます。 酔ってフラフラなのに、胸はどきどきと音をたてています。 それにしても、と私は心の中でひっそり問いかけます。 君に何かあったら、それってどこ目線なのでしょうか。 上司の目線。やっぱりそうなのでしょうか。
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