第57話 誓い

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披露宴のイベントにブーケプルズというものがありました。何かと言いますと、ブーケトスの変則バージョンです。 ブーケトスは新婦が投げたブーケを女性がキャッチするものですよね。ではなくて、何本かある紐の中から、ブーケに繋がる紐を選ぶのです。 なるほど。確かにブーケトスでは、ひとつの花束を狙って争奪戦が始まる場合がありますものね。バーゲンセール中のデパートかの如く、殺伐とした戦いが。 その点、ブーケプルズは紐を引くだけですから、小綺麗なものです。素晴らしい考案だと思いました。きっと考えたのは男性なのでしょう。 そんな前置きはどうでもいいのですが、当然私も未婚なのでブーケプルズに参加しました。 「では、お1人1本持ってください」 都子さんが持っているブーケから多くの紐が伸びています。私はこれかなと思うものを選びました。取った者が次は結婚する。そのジンクスを胸に置いて。 まさか当たらないですよね。これだけ女性がいて、当たらないですよね。 「ぎゃっ!? ひゃーっ!?」 そしたら見事当たっちゃったんです。ブーケ、ゲットしちゃったんです。 「しぇんぱいしぇんぱーいーっ!」 都子さんから花束をいただいて記念撮影をするとすぐにテーブルに戻りました。一番に先輩に報告がしたくて。 「あれ」 でも先輩はテーブルにいません。きょろきょろっと見渡しましたが、会場のどこにもいませんでした。 タバコ吸ってるのかなと思い、会場外に出るとそこで電話をしている先輩を見つけました。 表情は明るく、楽しそうで仕事関係の電話ではない事は明らかでした。 誰だろう? 疑問に思ったところで電話が終わり、気配に気が付いたのかこちらに振り向きました。 「お、何だその花」 胸の中の花束に少し驚いていらっしゃいます。 「あの、これはブーケプルズで見事ゲットしちゃいましたっ!」 「うわ。マジかよ!? 凄い確率だろ。こんなところで運使い果たして可哀想な奴だなー」 なんて、いつも通り軽口を言いながらも頭を優しくぽんぽんしてくださります。お花、嬉しいんです。頭ぽんぽんも。 でも。 「あの、電話は……」 今、誰と電話をしていたんですか? 「すみれさんからだった」 知らない名前。
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