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「前、家の近くの小料理屋行ったろ? あそこの女将さん」
「あぁ。あの時の……」
どうして、小料理屋さんの女将さんと先輩が電話をしているのか分からなくて戸惑います。
「最近よくあそこでお世話になってて。この前1人で飲みに行った時に色々あって少し手伝ってさ。お礼したいって引き下がってくれんから、じゃあ料理教えてくださいよなんて言ったら快く受けてくれてさ」
「え? そうなんですかっ? え……えっと、すみれさんは…………独身なんですか……? 」
「バツイチっぽいよ? つーか別に変なのじゃねぇから勘違いすんなよ。教えて貰うっつっても姪っ子さんも一緒にいて2人きりじゃねぇし」
何とも言えない顔になっていたと思います。
「心配すんな。熟女に興味ねぇし」
そうは言っても、女性は女性ですよね。
先輩にその気なくても、相手がその気だったら……。
色々あって少し手伝った……どんな状況だったのでしょうか? スーパーマンみたいでかっこいい先輩を見たのでしょうか? それで惚れない女性なんていますか?
すみれさんは、大人の包容力がありそうな素敵な人でした。
そう、私とは真逆な……。
ふたりで会場に戻ります。
「そういや俺タバコ止めた」
「あ、そうなんですか……」
「舌によくないから」
先輩……本気で料理に向かおうとしているのでしょうか。
すみれさんに出会った事で、すみれさんの料理を食べた事で、その夢にもう一度目覚めたのですか?
私の知らないところで、知らない内に先輩が変わっていっている……?
「あの、今日は一緒にいられますかっ……!?」
何だか寂しいです。
先輩の夢ならば絶対に応援したいですけれど、心を動かしたのが私ではなくて他の人だと思うと……。
「当たり前だろ。誰が名古屋なんか帰るか。明日の夜まで帰らん。今日はデートって言っただろ?」
にやりと笑う顔。
早く触れ合いたい、です。不安になった事が恥ずかしくなるくらい愛して欲しい。
先輩に関わっていたい。
まだ竹澤さんと都子さんの披露宴が終わっていないのにも関わらず、心の中はその思いでいっぱいでした。
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