16533人が本棚に入れています
本棚に追加
披露宴も滞りなく進み、ついにお開きの段に。
会場の出入り口に新郎新婦、それぞれの両親が立ちゲストを見送ります。
「今日は来てくれて本当にありがとう」
都子さんと竹澤さんは私と蔵元先輩と片桐先輩に一礼をするとドラジェを手渡してくださりました。
「瀬野さんは、次ね!」
握手を求められたので応えます。蔵元先輩と片桐先輩は会釈して先に出て行ってしまいました。
「は、はい……!」
わたあめちゃんの件があってから、都子さんに対してわだかまりというか、疑惑が燻っています。今も、心の中で。
都子さんが、わたあめちゃんを捨てたのじゃないかと。竹澤さんが可愛がっているのが許せなくて虐待したのではないかと。
でもこんなにさっぱりしていて素敵な女性が、あんな酷い事するとは思えないですし……。
何より、この人は竹澤さんが選んだ女性です。
わたあめちゃんは、やっぱり逃げちゃっただけなのかな……私の家の前にいたのは、わたあめちゃんが頑張って戻って来てくれたからで……。
「あのっ! この度は本当におめでとうございますっ! 末永くお幸せにーっ!」
疑問は隅に置いて、もう一度しっかり祝福の言葉を伝えました。笑顔で。
あ、突然バカデカな声を出したから都子さん、きょとんとしてしまっているではありませんか。
「はっ! すみません急に大きな声出してっ!」
「いやいや。本当にありがとうね」
私に慣れている竹澤さんは動じません。
そうして笑って、こうおっしゃりました。
「ブーケ良かったね。瀬野さんもいつか、いい報告を聞かせて」
「はいっ!」
いい報告。
私もいつか、竹澤さんにする日が来るのでしょうか。
「瀬野さん、ありがとう!」
誰よりも輝いている都子さん。
世界で一番幸せそうな都子さん。
この結婚式からたった数ヶ月で離婚してしまうなんて、夢にも思ってもいませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!