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「先に入れ」
カギを開けると先に入るよう体を促され、おどおどと部屋の奥へ進むとなんと、ガラステーブルの上には真っ赤なバラの花束とケーキが。
「えっ…………ぎゃーーーーーっ!?」
ぱんぱんっと、背後から破裂音。振り向くと先輩がクラッカーを引いていました。
「ハッピバースデーツーユー。ハッピバースデーツーユー。ハッピバースデーディア瀬野ちゃんー」
「……ええあぁぁーっ!?」
「やっと分かったか? この鈍感女が」
そうでした。さ来週……8/21日は、私の26歳の誕生日なのです。
先輩の言動の意味を今やっと理解しました。さ来週は会えないからその代わりに今日なのですね。
それにしても、バラの花束もケーキもとびきり大きいのですが、改めて見てこの部屋も凄いです。階も上ですし、ラグジュアリーです。夜景もさぞ綺麗に見えるのでしょう。スイートルームに違いありません。
全部、今日のために、私のために用意してくださったのです。
「くっそー、せっかくガラにもなくバラの花束なんか買ったのにまさかお前がブーケゲットするなんて思ってなかったわ」
バラの花束……確かにちょっとキャラじゃないです。
ちょっと悔しそうにしている先輩が可愛くて、たまらなくなって抱きついてしまいました。
「当日は電話で祝ってやるから。ま、これで許せ犬コロ」
髪を撫でてくれます。口調とは裏腹に優しい指先。
愛しい気持ちと求める気持ちが爆破しそうです。
「ケーキ食う? 腹減ったら何か頼んでもいいし」
「やだっ!」
「あ?」
「ケーキより先に……いっぱい愛してくれませんか……っ!」
望む事が出来るならば、今はそれだけ。
先輩の愛が欲しいのです。
「お。たまには可愛い事言うじゃん?」
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