第1話 竹澤さんについて

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2015年、7月。 私のパソコンが壊れた時のお話です。 「あれ……あれ?」 それまで健気に働いていたパソコンが、突然フリーズしてしまったのです。 「あらら?」 私、課長様からちょっと急ぎの仕事をいただいてたんです。慌ててマウスやキーボードを弄びますが、あまりいい結果にはなりません。セーフモード起動などを試していましたが、突然うぃいいいんーと大きな悲鳴をあげ真っ暗になってしまいました。 「凄い音したけど、どうした?」 丁度通りがかった竹澤さんがひょこっと後ろから様子を見に来てくださりました。 フレッシュかつみずみずしい爽やかな香水の香りがふあっと香って、その時点で私はもう、椅子から転げ落ちてもいいくらいでした。が、何とか尻を椅子にくっつけて背筋を伸ばしてお話をしました。 「あの、パソコンの調子が悪くて、セーフモード起動とかは試したのですけれど!」 「ちょっと見よっか?」 「は、はいっ!」 どうやらパソコンの事情に詳しいようで次々と解決策を試されています。キーボードに触れる指。男の人にしては、長い指でした。でも竹澤さんが何をしたところでパソコンは息を吹き返してくれないのです。 「システムがクラッシュしたのかも。バックアップ取ってある?」 「小まめにサーバに置いてます」 「そうですか。ではデータはそこから出して……あ、もしかして瀬野さん、変なサイトとか閲覧してたんじゃないの?」 「えっ!?」 チラ、と鋭くて冷えた目に射抜かれ動けなくなりました。 固まりました。 「へ、へんなサイトとはもしかしてアダルト動画サイトや出会い系サイトの事でしょうか!? 私、わたくし、瀬野愛香は、神に誓ってそのようないかがわしいサイトの閲覧などは! い、いえでも、ここで白状しますと、プロ野球速報などはお昼休みなどにコッソリ見ていました!」 慌てていたので妙な返事をしてしまいました。 竹澤さんは一瞬ぽかんとすると、くすくすと笑い出しました。 「冗談だよ。真に受けないでよ」 そうでしたか。先の発言はユーモアある意地悪だったのです。クールに見せかけておきながらときどき、私達部下をからかうのです。
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