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「ほんと無茶しないでくれよ」
竹澤さんの車に乗せられました。レクサスで色は白という事くらいしか分かりません。中はよく片付いていて煙草のにおいなどはせず、シトラスの香りがわずかにする程度です。これは竹澤さんのお車なのでしょうか。
「この車は……」
「僕の車」
「ひぃーーー!」
車に乗ってしまった!
「何だよひぃーって。朝弱くて、よく寝坊するんだよね。そんな時は車で来るんだよ」
「そ、そうなんですか……?」
「そうなんです」
朝、弱いのですね。意外です。
遅刻した所、まったく見た事ないですけどね。
ハンドルを握る横顔に窓からの西陽が差し、影が出来ています。瞳が金色のような色合いになり、より一層綺麗に見えました。男の人なのにこんなに美しいって一体どういう事なのでしょうか。
心臓の自己主張が止みません。
そしてひとつ心配事があります。
「あのぅ。竹澤さん病院って……」
「ん?」
「病院って、足、の病院ですよね?」
「え? 何て?」
「いやぁあの。私もしかしたらアタマの病院にでも連れて行かれるのかと思いましてーっ!」
空気が固まり、やばいと思いました。
「ぶっ! 何言ってんの!?」
あははと声を出して笑うのです。口は大きく開けて、目が三日月みたくなって、目尻にシワが出来ていらっしゃいます。可愛いだなんて、きっと失礼です。でもその竹澤さんの笑顔は可愛いとしか形容出来ませんでした。
「変な子だねぇ」
ダメです。そんな顔されたら、そんな風に笑われたら。
私などはコロっと惚れてしまいます。
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