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第1話 忘却の始まり
『君たち下等生物(にんげん)は愚かだ。愚かだから忘れ続ける生き物だ。都合の悪いことを忘却し続け、目を背け続け……そして何も進化しない。愚かな下等生物に許された選択肢は……ここで首を落とされ、腹を裂かれて絶命する生命の放棄か、自らの有り余る幸福を捨て、自らを不幸に貶め……幸福を忘却すること』
あの日、僕たちの前に現れた白銀の少女が言い放った台詞だ。
その少女は天使のような美しい羽根を持ち、聖母の様に慈悲深い表情で、悪魔の様な事を言った。
【幸福の忘却】……全ての幸福を忘却し、奪われ、踏みねじられる。これほどまでに残酷で醜悪で……美しいゲームを他に僕は知らない。
【幸福の忘却】より5時間前、奪われ続けた僕の世界は灰色だった。
僕は教室の端の席で萎んでいた。
今は昼休み。普通の中学生なら校庭でスポーツをしたり、教室で談笑したりするのが普通なのかもしれないが、僕……金子 修は違う。
「……くだらない。どいつもこいつも、何もかもが」
教室に残っている馬鹿共(クラスメイト)を見渡し、小声で呟く。
僕にはこいつらが、灰色にか見えなかった。
「……こんな連中と同じ空気なんて吸ってられるか」
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