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僕らの顔を伺うこともせず、少女……いや、天使は話を進める。
「キューピットの矢なんて、よく言うだろう? あれは間違えじゃなくてさ、ボクたち天使は生まれながら3本の矢を持っている。それは、幸福を司る矢でね。ボクたち天使がそれを君たち人間に打ち込むことによって、君たち人間の幸福が初めて生まれる」
「……」
「けれど、その矢を全て失った時、天使は死ぬ。天使としての役目を全うしたと初めて認められ、死ぬ。だからこそ、ボクたちは命を懸けて矢を撃ち込むときには努力している人間や、善良な人間を選ぶ。努力や善行が報われるというのは、そういうことさ」
数分前の僕ならきっと信じなかった。
けれど、この天使の超人的な能力を見ればこんな話もすぐに信じてしまいそうだ。
「けれど、今の君たちには……その価値が無いんだ。ボクたちが命を懸けて放った幸福を、お前たちはなんと言った? 当たり前だと言った! ボクたちが命を落としてまで与えた幸福を!」
天使は怒りを露にし、床に転がる真栄田の腹部に蹴りを入れる。
真栄田はただ、啜り泣いているだけだ。
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