第2話 幸福の重み

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 逆に言えば、1人で100ポイントを背負わせれば他の人間は幸福を忘却する必要もなくなるとも考えられる。 「ルール2、自身の忘却する幸福は、前の順番の人間の物より大きいものでなければならない。もし不足した場合は……強制的に徴収する」  エルが不気味な笑みを浮かべる。  徴収、という言葉をこれほど凶悪に感じることは初めてだ。 「で、これはルールじゃないけどアドバイス。幸福を忘却する前に君たちには自身の幸福についてアピールする機会を与える。自分にとってこれから忘却する幸福がどれだけ大切なものか、重要なものかを自分の言葉でボクに語る。それによって忘却できる幸福量も変動するから、ゲームクリアへの近道と言える」 「その幸福値って、あなたが決めるの?」  牧島が不機嫌そうに聞く。 「結構曖昧なものでね、その時のボクの感情とか心情で君たちが忘却できる幸福量が大きく変動する場合もある。つまり、実際には価値のない1ポイントの幸福でも、場合によっては100ポイントに化けることもある」 「待て、あんたさっき俺の心を読み取ってただろ。いくら口で誤魔化してもあんたには無意味じゃないのか」  僕は咄嗟に話に入り込んだ。  さっきエルは僕の考えていることを確かに読み取って当ててみせた。     
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