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そんな相手に嘘をついても、何の意味があるというんだ。
「見かけによらず鋭いね。確かにボクは目を合わせるだけで君たちの考えてることなんてお見通しさ。けど、それはフェアじゃない。面白くない」
「なら、どうするつもりだ」
「だから、一時的に……捨てることにするよ」
そう言うと、エルは右手でピースサインを作り、それを両目の瞼の上に重ねる。
見覚えのある光景だ。そう、真栄田の眼球が弾け飛ぶ瞬間の光景だ。
唯一異なるのは、真栄田ではなくエルの眼球が破裂音と共に弾け飛んでいる点だ。
「っひ……あっ」
気の弱そうな女……赤城が口元を抑えながらうずくまる。
よく見ると、顔中にエルの眼球の残骸が付着していた。
「ボクだってこのくらいはするさ。人類全員に幸福の重さを教え込むんだ、この程度」
得意げに語るエルだが、どこかその表情は引きつっていた。
やはり、天使でも痛みはあるのか。
「それじゃあ、フェアになったところで早速……」
「あの……その前に、そこの彼……真栄田君」
エルの声を真名が遮る。
真名が指差す先には、虫の息になった真栄田が転がっていた。
両腕と眼球を失い、もはや瀕死の状態だった。
「ああ、忘れてた。随分静かになったと思ってたところなんだ」
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