第2話 幸福の重み

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 エルはせっかちなのか、自己紹介の終わった途端に立ち上がり、ゲームの開始を宣言する。 「そんないきなり……」  流石の牧島も、いきなりの使命に難色を示していた。 「なんだ、休憩でも欲しいのかい? 君たちは一刻も早く部屋から出たいものだと思っていたのだけど」 「いやけど……幸福って」  見本や練習も無しにいきなり幸福を忘却しろと言われてもそれは困るだろう。  僕は自分が1番でなくて良かったと胸を撫で下ろす。 「んー確かに、基準も無しにいきなり幸福を忘却しろというのも愚鈍な君たちには酷か。よし、ではゲームに参加できなかった真栄田君の幸福を代理で僕が忘却するとしよう」  エルは納得したのか、目も見えないのに部屋内を彷徨い始める。  そしてある所で足を止め、数分前までは真栄田だった肉塊の中から何かを取り出した。 「このネックレス、趣味は最悪だが純金だ。彼にとってどのくらいの価値がある幸福かは今となっては分からないけど……幸福量としては5ポイントってとこかな」  それは真栄田が身に付けていた純金のネックレスだった。   その純金も、今は血で赤黒く染まっている。  具体的な価値は分からないが、これで残り95ポイント。 「……決まった。決まったわ」  タイミングよく牧島が手を挙げた。     
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