第1話 忘却の始まり

3/16

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
 僕をクラスの晒し者にし、気が済んだのか真栄田は僕を突き飛ばして背中を向けた。 「……ど、DQNが」  僕は心のむかつきを吐き出すように、小声でつぶやいた。  しかし、その瞬間に真栄田は足を止め、こちらを振り返った。 「あぁ!? てめぇ聞こえてんぞコラァ! もういっぺん言ってみろ」  すごい勢いで僕の胸倉を掴み上げ、壁へと叩きつける。 「お前本気で痛い目見ないと分からねぇみたいだな、ちょっとこっち来いよ」  真栄田の声には先ほどまでの軽さは無く、ドスが聞いた重い声だった。 「た、たすけ……」  教室の隅から隅へ視線を送る。だが指を指し笑う者、スマホで撮影をする者はいても、僕を助けようとする人間は誰1人としていなかった。 僕はそのまま真栄田に襟首を掴まれたまま教室から連れ出された。 「……っくそ、クソDQNが……低能で底辺な落ちこぼれの癖に……」  あの後、教室から連れ出されて屋上で暴行された。挙句の果てに弁当は踏み潰され、とても食える状態ではなかった。 「くっそ! あんな奴、社会に出たらどうせロクな職にも就けずに……僕の方が上になるんだ……」  廊下で人目も気にせず大声を出してしまう。僕の周りから生徒が遠ざかっていくのが分かったが、それでも止まらなかった。 「屑……屑……屑が」     
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加