第3話 牧島 唯の忘却

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 牧島の叫びを聞き流し、ハサミを閉じるように2本の指を閉じた。 「あっ……」  牧島の両足は鮮血を吹き出しながら宙に舞った。 そして、それはすぐに消えて天秤の上へと移動した。 「ああああああああああああああああああっ! 足っ……あたしのっ……あ」  天秤に牧島の両足が加えられ、牧島の方へ徐々に傾き始める。 「おお、両足含めて15ポイント……かなり稼げたじゃないか! 真栄田君のと合わせて幸福の忘却20ポイント獲得おめでとう」  両足を失っても、たったの15ポイント。真栄田と合わせて20ポイント。  残された僕、真名、赤城の3人で一体どれだけの幸福を失えば、ゲームは終わるのか……僕はとてつもなく不安になり、呟いた。 「……悪魔だ」 「ふん、何とでも言うがいいさ。幸福の忘却のためなら、ボクは鬼にでも悪魔にでもなる」  エルの足元で倒れた牧島は、もはや泣くことすらできずに光の無い目で天井を見つめている。 「まぁ、君たちもこうなりたくないならよーく考えるんだね」  確信した。エルは僕たちを……人間をただ痛めつけ、苦しませたい。  ゲームなんてその手段にしか過ぎない。 「では、次は赤城 愛子。君はどの幸福を忘却する?」  次の獲物を指名したエルの表情は、満面の笑みが浮かべられていた。 
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