第1話 忘却の始まり

5/16

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
「またクラスの人にいじめられたの? いい加減誰にやられたのかあたしに言って? あたしがちゃんと注意するから」 「……他人の癖に、僕に構うな」  その言葉に真名の表情は曇った。しかし、すぐに明るい表情を取り戻し、スクールバッグから風呂敷に包まれた弁当箱を取り出した。 「お弁当また盗られたの? あたしまだ食べてないからこれ良かったら……」  僕に同情してやがるのか。幼馴染だとか都合の良いこと言って、優しい自分に酔っているに決まってる。  皆から必要とされ、認められてる幸福の塊のお前に僕の何が分かる。 「いらねぇよブス!」 「きゃっ……」  僕は差し出された弁当を振り払い。廊下に散らばった残骸を踏み潰した。 「僕は……僕はいじめられてなんかない! 相手にしてやってるんだ。今日もあの頭の悪いDQNに絡まれたからさ? 喧嘩してやったんだ」  真名は一瞬、茫然としていたがすぐに明るい表情を取り戻して言った。 「……修ちゃん、お腹空いたら3年の教室まで来てね。まだ、菓子パンとかもあるから」  僕は苛立ちを覚えながら真名を置いてその場を去った。  教室に戻ると、真栄田と取り巻き数人が僕の席を囲んでいた。     
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加