第1話 忘却の始まり

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「おー戻ってきた金子クン。ゴミはゴミ箱にって習わなかったの? 整理整頓くらいちゃんとしようぜ」 「……」  僕の席の上には、ゴミ箱の中のゴミがぶちまけられていた。  何のゴミかは分からないが、腐ったような臭いも漂ってきた。 「うわくっさ」 「元々でしょ」 「ほんとクラスから消えてくんね―かな」  教室の隅々から、ヒソヒソと声が聞こえてくる。 「あとさ、生徒会長が可哀想だから関わんなって。あの人はお前とは違って、みんなにとっての幸福なワケ。みんなにとっての不幸のお前とは違うのよ」  真栄田が僕の肩に手を回してくる。  僕はその手を振り払い、机と椅子を思い切り蹴り飛ばし、そのまま授業が始まる前に無断で早退した。  まだ下校には明らかに早い時間帯だったが、僕は構わず自宅の玄関を開ける。この時間、母親はパート、父親は何年か前に事故死したので僕1人の空間だ。  部屋に入るなり、僕は持っていたスクールバッグをベッドに投げつけた。 「僕は……僕は弱くない……ただ構ってやってるだけ」  部屋の真ん中に突っ立て、呪文のように唱える。 「その気になればあんな連中、簡単に……」  あんな馬鹿共、卒業すれば会うことも無い。今のうちに良い気にさせておけばいいんだ。  今は奪われる側でいてやる。けど、僕は本来奪う側の人間なんだ。     
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