第1話 忘却の始まり

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「あんな馬鹿共、相手にする価値もないが……いつかあいつらから幸福を奪ってやりたい」  これが最近に僕の日課だった。幸福そうな、裕福そうなクラスメイトの顔を思い浮かべ、そいつらから金でも命でも良い、幸福を僕が奪い取ることを想像する。  今は僕が奪われる側だが、いつか……学校の連中から全てを奪ってやりたい。  そんなことをボーっと考えていると、無性に気持ちが落ち着く。  そう思いながら天井を見つめていたその時、どこからか声が聞こえた気がした。  耳を澄ませて聞いてみると、その声は徐々に僕に近づいてきていた。 『幸福、か』 「だ、誰だ」  思わず身構えた。テレビか?  『君は自分が不幸だと思ってる?』  声は若干幼い印象だが、聞き取りやすい澄んだ声だった。 「……ああ」 『いじめられているから?』 「違う! 僕は、僕は!」  いじめ、という言葉に過剰に反応してしまった。 『ああ、構ってやってるんだったね。けど、どうして?』  まるで嘲笑したような声に僕は苛立った。こいつ、なんで僕の事を知っている? 「世の中には馬鹿が多すぎる、それが不幸だ」 『っぷ、はははは!』 「何がおかしい!」  こいつ、俺をからかっているのか。新手の悪戯か? 『いや、何でもないよ……っく。でもね、ボクから見たら君もその馬鹿の一員さ』 「なに」     
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