第4話 赤城 有紗の忘却

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第4話 赤城 有紗の忘却

「わ、私……は、うっ……」  赤城は口元を抑え、膝を着く。 「ちょっと赤城さん……」 「おや、体調が優れないのかな。君のためにも早く決断をするべきだと思うよ」  エルが膝を着いた赤城に手を伸ばす。 「ううん、大丈夫……です。もう、忘却するものは決まってるから」  赤城が手を取って立ち上がる。 「そんな簡単に……さっきの見たでしょ? 牧島さんの……あれ」  真名が心配そうに赤城を見つめる。 「もちろん。けど、私には……選択の余地がないから。生き残るためにはこの選択肢しか残されてない」  赤城はもう決意したようだった。目つきが今までと違った。 「では、聞かせてもらおうか赤城 有紗。君が忘却する幸福を」 「……」  しばらくの沈黙の後、赤城が口を開いた。 「私は……っ、私、赤城 有紗は……捨てます」 「何を?」  お腹を何度か摩った後、言葉は続いた。 「……この、このっ……お腹の中にいる……私の子供をっ……」 「……へぇ」  それを聞いてエルがニヤリと笑った。  さっきからやたら腹を気にしていると思ったら……妊娠していたのか。 「君にとってその子供はどのくらいの価値がある? どれほど重要な幸福なのか、ボクに教えてくれないか」     
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