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最終話 金子 修の忘却
「ほう、随分と強気だね。残りの50ポイントを全て君が稼ぐと?」
エルは半笑いで僕に尋ねる。
「ああ」
「分かっているとは思うけど、さっきの赤城さんが30ポイント。それを超えるとなると……君にとっては相当な代償を払うことになる」
胎児とはいえに人の命で30ポイント。つまり、俺も何かしらの命かそれ以上の幸福を忘却しなければ50ポイントは稼げない。
「分かってる。僕にはそれだけの覚悟も……幸福もある」
僕は覚悟を決め、エルを睨み付ける。
「言っちゃ悪いけど、君にそんな大きな幸福が支払えるとは思えないね。たったの数日間だが、君の生活を観察させてもらったからね」
「ああ、お前の数日間の観察じゃ僕の幸福なんて理解できるはずがない。僕の幸福は……そんな安っぽいものじゃない」
僕は日ごろから幸福なんか感じたことは無い。けれど、1つだけ……いや、1つしか思いつかない。
僕を支える、唯一の幸福。
「ほお、さぞ素晴らしい幸福なんだろうなそれは」
エルはニヤリと笑みを浮かべる。
「待って修ちゃん! 修ちゃんのその幸福が何かは分からないけど……修ちゃんだけ背負うことない、やっぱり私が!」
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