第六章 一騎打ち

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 賀陽の部屋は、2階とはいえ下がコンクリート舗装。そのまま飛び降りると足を(くじ)く危険がある。  そこで、1階ベランダの手すりでワンクッション置いてから、アスファルト道路に飛び降りて駆けだした。  豪臥たちはコンクリートに直接飛び降りたので、中の一人が足を挫いて倒れた。  年寄りの自転車とぶつかりそうになった賀陽は、ヒラリと身を翻して避けた。後方で、一人がぶつかってまた脱落した。  あとは豪臥だけだが、執拗に追ってくる。  路地を逃げ回り、小さな鳥居と祠しかない稲荷神社を通り抜けて裏に回った。  竹垣を飛び越えてしばらく走ると、豪臥の姿が消えたので足を止めた。  「フー、なんとか撒いたか……」  撒いたはいいが、部屋に戻りたくない。  賀陽は、野宿を覚悟した。  まだまだ冷え込む冬の夜。ジッとしていると身が凍える。  暖まるためにブラブラと歩き出したところで、暗がりからパンチが飛び出てきて顔面を強打された。  体が吹っ飛ばされて道端に投げ出された。 「ようやく、追いついたぞ」  豪臥が、ハアハアと息を荒げながら勢いづけて襲ってきた。
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