第十章 最後のピース

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「グ……」  御法川の足をはねのけたいのだが、全体重を掛けていてピクリとも動けない。 「あがけ、あがけ」  最後まであきらめたくないが、御法川の目を見ることが出来なければ催眠術を使うことはできない。 「これまでか。クソ!」 「ハハハハ!」  賀陽が悔しがるほど、御法川は喜ぶ。  錆びた包丁を握りしめ、賀陽に向かって動かそうとした瞬間、足が飛んできて手を蹴り上げた。  包丁は御法川の手を離れて飛んでいった。 「ウオ!」  何が起きたのか理解できない御法川は、痛む右手を抑えながら呆然とした。  その首が、『く』の字に曲がり、体全体が賀陽から離れて倒された。  何者かによる攻撃を受けていることは賀陽にも御法川にも理解できたが、その正体を見定める暇もない。  頭を押さえていた足が離れたので、自由に動かせるようになった賀陽が上を見ると、豪臥がいた。 (狂犬、キター!)  最高のタイミングで来てくれた。 「豪臥! 助けに来てくれたのか!」  怒り肩で拳を握りしめている豪臥は、御法川に向かっておさまらぬ感情をぶつけた。 「仲間をやったのは、御法川! てめえだな! 絶対、許さねえ!」  賀陽を助けに来たんじゃなく、仲間の仇を取りにきたところを、たまたま、賀陽を助けた形になったようだ。  倒れた御法川に追い打ちを掛けようとしている豪臥に向かって、賀陽は叫んだ。 「豪臥! 先にこれを外してくれ!」  縛られた両手を見せて、必死にアピールした。
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