第六章 一騎打ち

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 10年前にはまだ小学生だった豪臥だが、犯人ではないと決めつけることもできない。  あるいは、その時に何かを目撃した可能性も考えられる。 「俺は、犯人じゃない」 「そうか。では、犯人を知っていて、庇っているのか?」 「そうじゃない」  賀陽は、『犯人は待子だ』と名指しした怪文書を思い浮かべた。  そして、この部屋に侵入した何者かがいる。  それは、豪臥だったのか? 「お前は、待子さんが犯人だと考えているんじゃないだろうな?」 「そんなことはない!」  そこは、強く否定してきた。 「怪文書を出したのと、この部屋に侵入してガス漏れさせたのは、お前か?」 「何の話だ?」  とぼけているのか、怪訝な顔で否定された。 「事件に関して、何かを知っているんだな? 隠さなくてもいい。往子ちゃんの事件が起きた時、お前もあの公園にいたことは分かっている。待子さんへの退行催眠の中で、出てきた小学生男児。その中の一人がお前だ。お前は、待子さんのことも事件のことも、その後のことも、全部知っているんだろ? 犯人に繋がる情報を持っているなら、全部、話してくれ」
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