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「俺は、何も知らないんだ。10年前は小学生。その頃の記憶なんて、何も残っていない。事件があったことすら、最近まで知らなかったほどだ」
「そんなことはないだろう。お前が催眠中に邪魔をしたのは、待子さんにお前のことを思い出させたくなかったからだろ?」
「あれは違う。今更思いだしたところで、彼女には何の得もないからだ。それどころか、せっかく立ち直ってきたのに、思いだしては元に戻ってしまう。だから、邪魔をしたんだ」
「それは、間違っている。あの子は、まだ事件の後遺症に苦しんでいる。事件解決することは、彼女自身を救うことにもなるんだ。だから、お前も僕に協力しろ。僕を椅子で叩いたことは目をつむってやるから。それと、僕のプリンを人質にとったことも」
「協力しろ、だ?」
急に、豪臥の声のトーンが変わった。目の色も変わった。
いきなり、人格が変わったかのような急変ぶり。
賀陽は、何か悪いことを言っただろうかと疑問に思った。
「俺に命令するんじゃねえ!」
豪臥が手に持っていた、賀陽の大事なプリンをグチャッと握りつぶして中身が周囲に飛び散った。
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