第六章 一騎打ち

8/20
前へ
/214ページ
次へ
 しばらく動かなかった賀陽だが、いつまでもこうしていられないと思い直した。 「凹んでいても何にも解決しない。プリンは次回の入荷日を店長に聞くことにして、まずは、この汚れた体だ……」  ヨロヨロと立ち上がると、シャワーを浴び直した。  それから、汚れた部屋を掃除する。  すると、あちこちにいじられた形跡があった。 「僕がシャワーを浴びている間に、何かを探したようだな。しかし、何も見つけられなかっただろう。当然だ。記録媒体は、僕自身なんだから」  賀陽は、調査記録をどこにも残していない。  全ての内容は、自分の頭の中だけに保存している。  脳は、一度見聞きしたものを決して忘れはしない。全て記憶として残っている。  賀陽は、特殊な方法でそれらを引き出すことができる。  他人には退行催眠で。己の記憶は、自己催眠で。  ソファに座ると、賀陽は自己催眠を掛けた。  頭の中にある、今まで集めた徳守豪臥の情報が鮮やかに浮かび上がる。
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

142人が本棚に入れています
本棚に追加