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少年院に入っている間に、両親が離婚。
そのため、入所時の名字は、『清水』だったが、出所時は、『土屋』となっていた。
さらに、転居と転校で誰も知らない土地へ引っ越していった。
『徳守』になったのは、大学入学直前に母親が再婚したことによる。
それまでかなり貧乏だったが、再婚してからは暮らしぶりが良くなっていった。
進学費用も、義父が出している。
再婚をきっかけに昔の土地に戻ってくるが、かつての知人友人は誰も寄り付かずに孤立している。
最近になって、ブック・カフェに出入りするようになった。――
情報は、ここまでだ。
賀陽は、自己催眠を解いて目を覚ました。
「あいつは、昔から待子さんを知っている。待子さんに執着していることも確かだ……。好意を抱いているんだろう。しかし、それは待子さんにとって迷惑なことだ」
何をするか分からない男に狙われるということは、女の子にとって結構な恐怖かもしれない。
「ここに来た理由は、前に僕がいろいろ調べていると匂わせたことによる。自分の過去が、待子さんに知られることを怖れているのかも」
そこまで考えた賀陽は、ガス漏れさせた理由について思い当たった。
「ガス漏れ工作は僕を殺すか脅す目的だと思っていたが、もっとあったのかも……。真の目的は、ガス爆発。ここにあるすべての情報を隠滅するつもりだったとか……。うまくいかなくても、警告にはなる。そう考えたのだろうが、企ては失敗、僕も引き下がらない。結局、直接探しにきたって感じかな?」
自分の情報が見つからず、嫌がらせでプリンを潰していったのだろう。
食べそこなった悔しさを思い出した。ちっちゃい嫌がらせだが、地味にダメージを受ける。
賀陽は、また、落ち込んだ。
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